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List Editingについて

USD のリファレンスを扱っていると、

#usda 1.0

def "sphereA" (
prepend references = @sphere.usda@
)
{
}

こんなかんじで、 「prepend」という記述があることがあります。 prepend とは「付加する」という意味で、文字通り Prim に対して「Reference を付加」
するという記述になります。 しかしながら、この prepend はなくても挙動としては正しく動きます。
では、この prepend というのは一体何を意味するのか?
というのが、今回のお題である ListEditing になります。

List Editing とは

ListEditing とは、USD の Glossary によると

USD が配列値のデータエレメントを読み込むことができる機能です この機能によって、 コンポジションアーク に対して配列タイプのエレメントを 非破壊的且つ疎らに編集することができます 日本語訳版より引用 https://usd.prisms.xyz/intro/USD-Glossary.html#list-editing

とあるとおり、コンポジションアークによって複数のレイヤー(usd ファイル)を合成したときに
配列タイプのアトリビュートなどを非破壊に編集するための機能を指します。

たとえば USD のリレーションの場合。

def "test"
{
rel aaa = [<RelA>,<RelB>]

def "RelA"{}
def "RelB"{}

}

まずは、ベースでこんな感じの構造があったとします。 Houdini の SOLARIS 上で要素を覗いてみると、
aa の Value には、 test/RelA と test/RelB という2つの要素があるのがわかります。

これに対して test/RelC という Prim をサブレイヤーで rel aaa に「追加したい」とします。

USD の合成は非破壊で行われるので、ベースの USD ではなく
サブレイヤーで合成するシーン側で「 aaa に加える」という処理を
編集できてほしいわけです。 そういう場合、

def "test"
{
prepend rel aaa = [<RelC>]
def "RelC"{}
}

このように prepend とつけることで

サブレイヤーで合成した結果をみると、 prepend で追加した要素が、 aaa の先頭に追加されているのがわかります。

このように、配列の要素に対して、「追加」したり「削除」したりできるのが この List Editing とよばれる「prepend add delete」の効果になります。

prepend append delete の違い

この ListEditing の3つと、それがない場合どういう違いがおきるかというと、

def "test"
{
rel aaa = [<RelC>]
}

まず、何もつかない場合。

この場合、配列のアトリビュートをそのままあった要素を無視して「上書き」します。

def "test"
{
append rel aaa = [<RelC>]

def "RelC"{}

}

次に、append この場合は、

配列の最後に要素が追加されます。

def "test"
{
delete rel aaa = [<RelB>]

}

最後に delete delete の場合は、要素が配列から削除されます。

元のレイヤーを編集せず、サブレイヤー側に ListEditing を追加することで 非破壊で配列の編集をすることができました。

コンポジションアークでの ListEditing の影響

リレーションの場合は、並び順に影響しましたが では、コンポジションアークの場合はどうなるでしょうか。

def "test"
(
prepend references = </RefA>
)
{
}

def "RefA"
{
string name = "RefA"
}

def "RefB"
{
string name = "RefB"
}

まずはこんな usda を用意してみます。 この結果は、 RefA をリファレンスしているので「name」は「RefA」になります。

def "test"
(
prepend references = </RefB>
)
{
}

このレイヤーに対して、 prepend で RefB を追加するレイヤーを作ってみます。

結果、リファレンスの評価の先頭に RefB がきたので、 name は「RefB」になりました。

def "test"
(
append references = </RefB>
)
{
}

対して append した場合。
この場合は、リファレンスの評価順序の末端に RefB が追加されているので

結果は RefA になります。

def "test"
(
delete references = </RefA>
)
{
}

最後に、 delete の場合。
この場合は当然のように RefA のリファレンスが消えるので

アトリビュートがなくなりました。

まとめ

こんな感じで、 単純にリファレンスで上書きしていくような場合は prepend があってもなくても
挙動は同じ(ない場合は上書き=最優先扱い)になりますが
delete を使えばリファレンスは消えるし
複数のリファレンスでコンポジションする場合は この ListEditing の順番に影響されてくるので、注意が必要かもしれません。
(基本サブレイヤーでの順番優先なら気にしなくて良いかもしれない)

あと、 余談ですが、カスタムメタデータの数字・文字列配列も List Editing 対応らしいのですが
探しても記述方法がわかりませんでした。 どうやったらいいんだろう...?